エネルギー : 展覧会 岡本太郎 を見て
展覧会 岡本太郎 のプレビューに行きました。とても刺激を受けた展覧会でしたので、散漫ですが、想うところを残しておきます。
多くの方は岡本太郎(敬称略)のことは、ご存知ないかもしれません。私の世代でも、名前とその活躍ぶりを知ってはいても、アーティストとして何を目指し、何を成したのか? どんな作品があるのか詳しく知ることもなく、「太陽の塔」を思いだすぐらいでした。ただ以前渋谷の壁画(「明日の神話」)を見てから彼の絵の異様さや、何か強く訴えかけるものが、少しだけ気にかかっていました。
1970年大阪万国博、私が高校を卒業し、宙ぶらりんな生活をしていた頃、岡本太郎は59歳。すでにスターでした。絵画はもちろん彫刻、家具や時計、衣類、食器のデザイン。札幌オリンピックの記念メダルのデザインも憶えています。TVやCMにも出演されていました。「芸術は爆発だ!」は名言です。いまだアーティストでここまで成功した人は、いないと思います。
80年代に入る頃からメディアの表舞台からは遠ざかっておられたようですが、この展覧会で知ったのですが、その頃過去に制作した100余点の絵画に加筆して修正されていました。1996年死去享年86歳。
私には多くの岡本太郎の作品は、強い色彩、激しい筆致、「怒り、悲しみ、暗さ」がダイレクトに感じられます。これは一般的な日本人が好むものとは思えません。しかし何故ここまで受け入れられたのでしょう? これまで、なかなか、わかりませんでした。
館内を巡りながら思ったのですが、時代にマッチした彼のキャラクターはあったと思います。しかし、それだけではなく彼の作品には得体の知れない、大量のエネルギーが感じられるからではないでしょうか。人はエネルギーを持つ存在に惹かれます。生きることのエネルギー。時代もエネルギーを求めていました。それを感じられるアート作品は、とても少なく貴重です。
彼が最後に出版した本「自分の中に毒をもて」の中で「強烈に生きることは常に死を前提にしている。死という最もきびしい運命と直面して、初めていのちが奮い立つのだ」とあります。
自分を鼓舞し続け、作品のエネルギーを拡大し、狭い平面から飛び出るようになり、社会に広く提供できるアート(パブリックアート)を模索。彫刻やタイル、壁画、カップや椅子等々。自分のエネルギーを爆発させ続けた、日本が誇るべきアーティストの歴史が垣間見れたと思います。
パリ時代の新しく発見された作品や、太陽の塔の構想スケッチ、明日の神話の下絵、膨大な数の絵画作品、パブリックアート群、関係者の方々の大変な努力に感謝です。とても刺激的な 展覧会 岡本太郎 でした。
それと追記となりますが、 展覧会 岡本太郎 の今回のガイドブックはとても工夫されており、良質なものでした。岡本太郎が気になる方は是非。大阪展の後、東京と愛知でも開催される予定です。
東京展:2022年10月18日(火)~12月28日(水) 東京都美術館
愛知展:2023年1月14日(土)〜2023年3月14日(火) 愛知県美術館